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東京地方裁判所 昭和43年(ワ)14672号 判決 1969年5月19日

原告

霜鳥武夫

ほか一名

被告

福岡運輸株式会社

主文

一、被告は原告霜鳥武夫に対し金八万一〇〇〇円、同土居淳志に対し金一二万二〇〇〇円の支払いをせよ。

二、原告霜鳥武夫のその余の請求を棄却する。

三、訴訟費用中、原告霜鳥武夫と被告との間に生じたものはこれを三分し、その一を被告の負担とし、その余を原告霜鳥武夫の負担とし、原告土居淳志と被告との間に生じたものは全部被告の負担とする。

四、この判決は原告ら勝訴の部分に限り、かりに執行することができる。

事実

第一、当事者の求める裁判

一、原告ら

被告は原告らに対し各一二万二〇〇〇円の支払いをせよ。

訴訟費用は被告の負担とする。

との判決および仮執行の宣言を求める。

二、被告

原告らの請求を棄却する。

との判決を求める。

第二、請求原因

一、(事故の発生)

昭和四二年四月一一日午前一一時三〇分頃、東京都中央区勝どき一丁目一三番地先交差点において、訴外鈴木孝の運転する大型貨物自動車(神八い二二二八号、以下甲車という。)と原告霜鳥武夫(以下原告霜鳥という。)の運転する小型乗用自動車(品川五ま五二九二号、以下乙車という。)とが衝突し、原告霜鳥は右前腕部打撲擦過傷、頸椎鞭打損傷等の傷害を、乙車に同乗していた原告土居淳志(以下原告土居という。)は頭頂部打撲裂創、頸椎鞭打損傷等の傷害を負つた。

二、(被告の地位)

被告は甲車を所有し、これを自己のために運行の用に供する者であつた。

三、(損害)

(一)  原告らの傷害の程度

原告らは各一〇日間入院して治療を受け、その後昭和四二年五月八日まで通院して治療を受けた。

(二)  慰謝料

各一五万円

(三)  自賠責保険金の受領およびその充当

原告らは慰謝料の一部として自賠責保険金を各二万八〇〇〇円受領したので、これを右慰謝料に充当すると残額は各一二万二〇〇〇円となる。

四、(結論)

よつて原告らは被告に対し、自賠法三条により右の慰謝料各一二万二〇〇〇円の支払いを求める。

第三、請求原因に対する認否

一、請求原因第一項中、原告らの傷害の点は不知。その余は認める。

二、同第二項は認める。

三、同第三項中、原告らがその主張どおりの自賠責保険金を受領したことは認め、その余は不知。

第四、被告の過失相殺の抗弁

本件事件は見透しのきかない交差点における出会い頭の衝突事故であり、原告側にも徐行義務不履行の過失があるので、原告らの賠償額の算定にあたり右過失を斟酌すべきである。

なお原告霜鳥は治療として五万五二〇〇円を、同土居は治療費として五万八八〇〇円を、また慰謝料として各原告ら主張どおりの額をそれぞれ自賠責保険金として給付されているので、この点を考慮しつつ、原告らの総損害を認定の上、これを過失相殺して得られた額から右の原告らの受領済みの自賠責保険金を控除して、原告らの損害を算定すべきである。

第五、抗弁に対する原告らの認否

原告らが治療費として被告の主張どおり自賠責保険金を受領したことは認め、その余は否認する。

第六、原告らの再抗弁

(一)  原告霜鳥は、たまたま昭和四二年四月二六日に、住居を移転する予定であつたところ、本件事故の為に移動が一か月延期となり次のような損害を蒙つた。

(1)  家賃(一か月分) 一万三〇〇〇円

(2)  引越手伝人への謝礼(三人分) 四五〇〇円

(3)  大工賃(三日間) 四八〇〇円

(二)  原告土居の妻は当時臨月であつたが、夫の付添看護のため過労に陥り、早産による異常分娩のやむなきに至り、そのため同原告は二万〇四〇〇円の出捐をした。

第七、再抗弁に対する被告の認否

いずれも不知。

第八、証拠〔略〕

理由

一、事故の発生

請求原因第一項の事実は、原告らの傷害の点を除き、その余はすべて当事者間に争いがなく、〔証拠略〕によれば、原告らはその主張どおりの傷害を負つたことが認められる。

〔証拠略〕によれば次の事実が認められる。

本件交差点は、幅員一一米のアスフアルト舗装道路と、幅員六米のアスフアルト舗装道路とがほぼ直角に交わる交通整理の行われていない、見透しの悪い交差点であり、乙車は右一一米の道路を北西に向つて進行し、甲車は右六米の道路を北東に向つて進行し、本件交差点にさしかかつた。甲車と乙車の速度はいずれも約二五粁であり、両車共に徐行義務を怠つて本件交差点に進入したため、本件事故となつたのであるが、その衝突の態様は、乙車の左側面に甲車の前部が衝突したものである。乙車の進行した道路の幅員の方が甲車の進行した道路の幅員よりも明らかに広いものであるということができ、また両車の衝突の態様から考えて乙車の方が本件交差点に先に進入していたと推認できるのであり、右のような事情を考慮すると双方の過失割合は、乙車運転者原告霜鳥につき二、甲車運転者訴外鈴木衍孝につき八とみるのが相当である。

二、被告の責任

請求原因第二項の事実は当事者間に争いがないので、被告は自賠法三条により原告らの蒙つた後記損害を賠償する責任がある。

三、損害

(一)  原告らの傷害の程度

(1)  原告霜鳥

〔証拠略〕によれば、同原告は前記傷害のため一〇日間入院し、その後昭和四二年五月八日までの間に四回通院したこと、同四三年一一月頃から頸椎が痛くなり、また疲れがひどくなつてきたため、同四四年三月一日医師の診察を受けたところ鞭打撲傷の後遺症であるとの診断を受けたこと等が認められる。

(2)  原告土居

〔証拠略〕によれば、同原告は原告霜鳥と同様の治療を受けたこと、その後首の廻りが悪くなり、右回転に比し、左回転が悪く、筋がひつぱる様な状態にあり、また、季節の変り目になると背中が痛み、首を動かすことができなくなること、時時頭が激しく痛むこと等が認められる。

(二)  慰謝料

右のような原告らの病状等を斟酌すると、原告らの蒙つた精神的苦痛に対する慰謝料としては、その主張どおり各一五万円とみるのが相当である。

(三)  過失相殺

乙車を運転していたのは原告霜鳥であり、本件事故は同原告の過失も競合して惹起されたものであること前判示のとおりであるから、同原告については、過失相殺をなすにあたりまず全損害を確定する。なお原告土居については何ら過失相殺すべき余地はない。

(四)  原告らの損害

(1)  原告霜鳥が治療費として自賠責保険金五万五二〇〇円を給付されたことは当事者間に争いがない。右事実によれば同原告は治療費として同額の損害を蒙つたものと推認される。その余の住居移転に関する損害は、これを認めるに足りる証拠はない。

そうすると同原告の蒙つた全損害は二〇万五二〇〇円となり、その八割相当額は一六万四二〇〇円(一〇〇〇円未満四捨五入)となる。右金額から同原告が保険給付されたことについて当事者間に争いのない自賠責保険金八万三二〇〇円(その内訳は、右に認定した治療費五万五二〇〇円のほか、慰謝料二万八〇〇〇円)を控除すると残額は八万一〇〇〇円となる。

(2)  原告土居が慰謝料の一部として自賠責保険金二万八〇〇〇円の給付を受けたことは当事者間に争いがないので、これを同原告の慰謝料から控除すると、残額はその主張どおり一二万二〇〇〇円となる。

五、結論

以上により、原告らの本訴請求中、原告霜鳥の請求は八万一〇〇〇円の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の部分については理由がないからこれを棄却し、原告土居を請求は全部理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条、第九二条を、仮執行の宣言については同法第一九六条を、各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 倉田卓次 荒井真治 原田和徳)

現場見取図

<省略>

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